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目が覚めたら。
第12章 鬼畜帝王が考えました
「え? え?」
その早さに目をぱちくりしていた瞬間に、ハル兄が飛ぶ。負けじとあたしもジャンプして手を伸ばしてボールをたたき落とそうとするが、ハル兄は空中で身体を捻り、あたしの手を避けるように後方に身体を倒しながら、上にぽいとパスするかのようなシュート。
ざしゅっ。
ボールは吸い込まれるようにして、ゴールした。
あんな無理な体勢でも転倒することなく、既に無事に着地していたハル兄が、転がるボールを手にして、唖然呆然とするあたしの肩を叩いて、言った。
「1回目」
あたしは、サバンナの帝王の身体能力を思い切り見誤っていたらしい。
裾はある程度開くとはいえ、浴衣姿で草履で走って飛んで。
たとえ御年36、お部屋でのデスクワーク時間が長かろうとも、だるだる~と家に帰ってもひたすら寝ていようとも、あたしが目覚めた時遅漏の一回がどうのと言ってしてくれなかった割には、今、何度も何度も容赦なく穿っているし、あたしが目覚めた時からなんだか若返って元気になった気すらする。
自然がハル兄を若返らせるのか。
さすがはサバンナの帝王!
ハゲハゲのふがふがになるようには思えない。
ハル兄には毛も歯もくっついていそうだ。
「次行くぞ」
ゴールで無理な体勢でもシュートが決まるのであれば、今度はゴールに来させないように、ドリブル段階でボールを奪ってやると、あたしが前に走ったその時、ハル兄はその場から動かず、大きな半円の外からボールをぽーん……。
「え?」
それはあたしの頭上を越えて綺麗な放物線を描き、音もなくゴールに吸い込まれた。
「おし、3ポイントきまった!」
ハル兄は手を拳にして、破顔する。
なにそれ、なにそれ、なにそれ!!
そんな簡単に、あんな距離入るものなの!?