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目が覚めたら。
第12章 鬼畜帝王が考えました
 


 ああ、あたしが卑猥な帝王に敵うはずもない。

 疲れ果てて肩を落とした時、あたしの横を風がすり抜け――。


「よし、3回目!」


 ハル兄がゴールした音が聞こえた。


「騙したの!?」

「騙したか、俺。お前が言ったんだろうが、妻になるって」

「く――っ!!」


 ざしゅっ!


「4回目、もーらいっ」


 あたしが落ち込めば落ち込むほどに、ハル兄はゴールをしていく。 

 こんなに簡単に連続シュートされるとは。


 次こそ、取る!

 あたしはゴール真下で目を光らせた。


「じゃあ最後。行くぞ」


 遠くから、ドリブルしながら一気に攻め込んでくるハル兄。

 本気に全力疾走しているくらいに早い。しなやかな肉体は、スポーツ選手のように機敏で、サバンナの帝王の本気にあたしは震え上がった。

 そしてハル兄は飛んだ。

 あたしの遙か上を、浴衣姿で凄まじい跳躍力を見せたのだ。


 影がよぎる――。


 あたしの頭上にハル兄の足。

 あたしの目の前に草履がぽとりと落ちた。


 そして――。


「俺の勝ち!」


 ゴールの真上から、両手でボールを下に押し込んだ。


 かの有名なダンクシュート。

 そう、36歳がそれをやってのけたのだ、浴衣と草履の姿で。


 あたしはどさりと尻餅をついた。


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