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目が覚めたら。
第12章 鬼畜帝王が考えました

「……シズ、俺もテニスはしたことはねぇけど、握り方ぐらいわかるぞ?」

「へ?」

「そんな持ち方をしてラケット使う奴、お前だけだ。ほら、教えてやるよ。……普通、教えなくても大丈夫だと思うんだがな」

 ぶちぶちと独りごちるハル兄は、あたしの背後から抱きしめるようにして、あたしの右手でラケットのグリップを握らせた。

「グリップは握手をするように握る」

 ハル兄の熱い吐息が耳を擽り、変な声が出てしまうのを必死で堪える。

「そうじゃねぇって。もっと自然に握れって。ああ、もう。俺と握手してみろよ」

 握られる手の熱さに、ぞくりとする。

 うわ、なんだろうこの高揚感。

「シズ」

 背中全体で感じるハル兄の熱。
 ふわりと漂う、ハル兄のオスの香り。

 やばい、発情しそう。

 スポーツマンシップに乗っ取らないあたしは、お天道様に見つめられているコートの上で、頭の中を濃厚なピンク色に染めてしまう。

 ああ、ごめんなさい。
 シズルは卑猥菌に汚染されてしまいました。

 思い出してしまうんです。

 ハル兄に抱かれていることを。
 この手や体でどんなに気持ちよくされて、ハル兄にきゅんきゅんしていたかを。

 淫魔の妄想万歳!
 言わなきゃ、卑猥にならないもん!

「おい」

 ハル兄の手があたしの顎を摘まんで、ぐいと後ろを向かせた。

 ぐぎっ!

 ……360度、回ってしまうかと思った。
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