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可愛いヒモの育て方。
第19章 キズ

 声も震えていた。
 ばっと顔をあげ、すがるように私を見つめる。暗闇でもわかる。その目からは、大粒の涙がこぼれていた。

「もう、ほっといてよ……」

 打ち付けた背中や掴まれた腕なんかより、麻人のその表情が痛くてたまらない。痛くて悲しくて、私の目からも涙が溢れた。
 言葉を発しようにも、喉に何かつっかえて、変な嗚咽にしかならなかった。だから必死に首を振った。頭がくらくらするくらい、ぶんぶんと首を振って私の意思を伝える。

「やだよ……」

 ようやく言葉にできたのは、だだっ子みたいな一言だけ。
 私は麻人の頬を、両手で包み込んだ。腕はまだ掴まれたままで、不自由な体勢で、本当は抱きしめたかったけどそれは叶わなそうだから、かわりに麻人の頬を挟んで流れ落ちる涙を拭う。

「ごめんね……、なんにもしてあげられなくて」

 拭っても拭っても、麻人の目からは涙が溢れでる。拭うたびに、私の親指が温かいそれで濡れた。
 私は麻人の頬に添えた手を、ゆっくりと下へずらした。首に触れる。赤い、痛々しい痕をそっとなぞった。
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