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限界Lovers
第13章 私の知らない彼の顔
会社の人たちと居ることに疲れた俺は一人でフラりと宿を出た。
どこに行きたいとかじゃなくてちょっとした散歩的な冒険心。
すると旅館のすぐ裏に公園があるのを発見した。
そこは子供達がサッカーをするのだろうか。
ゴールポストの側には忘れられたボールが転がっている。
「…懐かしいな」
久しぶりにボールを手に取る。
今は専ら「観る」専門になってしまったサッカーは12年やっていた。
目を細めて過ぎた日々を思い返しているとジャリっと砂を踏む音がする。
振り向くとそこにいたのは並木さんだった。
「何してるの?」
「並木さんこそ」
「山下くんが単独行動始めたから怪しくて」
俺から目を反らし並木さんは素っ気なく言った。
「…サッカーもうしないの?」
「あー、今は全然」
並木さんは手元のボールをじっと見ている。
「ねえ、リフティングしてみてよ」
「えっ?」
「いいじゃない、久しぶりに 」
「…別にいいけどもうできるか分かんないよっ…と」
ティン…とボールが膝で弾み足が自然に動き出す。
大学に入ってからボールに触れることはなかったからやはり昔みたいに体は動かない。
動かないけどこの感じ…
懐かしさから俺はボールに夢中になっていた。
「ーーーっ…は…やっぱダメだな、あの頃の半分もできねぇ」
転がったボールは並木さんの足元で止まった。
それを並木さんは拾い上げ、見たことのない表情で俺に渡す。
「…でもやっぱり山下くんはサッカーしてる時が一番カッコいいね」
「………」
「あっ…!へ…変な意味じゃなくてね!?」
「分かってるけどさ…並木さんて笑うと可愛いのな」
「!」
いつもムッツリしてる並木さん。
いい笑顔できるんだからいつも笑ってればいいのに…
「……して」
「えっ?」
「どうして山下くんってそうやって軽口ばっか叩けるの!?」
そして何故か怒られる。