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限界Lovers
第13章 私の知らない彼の顔
俺には返す言葉が見つからなかった。
あの頃の俺をそんな風に見てくれてた子がいたなんて思いもしなかった。


「でも就職先に山下くん見つけて…しかも真面目になってておおっ!?って思ったらあっという間に彼女作っちゃってさ、前みたいに不特定多数とかじゃないし…彼女できたら更に落ち着いちゃうし…せっかく今度は素直になろうと思ってたのに」


「並木さん…」


「私ね、今でも山下くんが好き」


並木さんは真っ直ぐ俺を見て言った。
その気持ちが胸に突き刺さる。
あの並木さんの秘めた想い、そんな風に俺を見てくれてたのは嬉しいけど…



「ごめん…」


「…もう不特定多数とは遊ばないの?」


「遊ばない。それに並木さんだってそんなの望んでるわけじゃないんだろ?」


「………」


「並木さんらしくないよ。もっと自分大事にしなよ 」


これ以上ここに居ちゃいけないと思った。
だからその場から歩き出す。


「待って!」


その時後ろから抱きつかれた。
慣れない感触に違和感だけが残る。


「並木さん」


「ごめん…ごめんね」


そう言いながらも俺にしがみつく力は強くなる一方で。


「…悪い」


その手を自分から剥がし振り返る。


「俺、彼女が本当に大事だからこういうの困る」


「黙ってれば分かんないと思うけど」


「それ、本心で言ってるなら軽蔑するよ」


「…山下くんに言われる日が来るとは思わなかったわ 」


並木さんは鼻先だけで笑った。



「ねぇ、彼女ってどんな子?」


「…素直で泣き虫」


「守ってあげたい子の典型だね」


「甘ったれでちょっと我儘で…以外と気が強くて頑固でさ、」


「ふうん…」


「でもそんなとこがすげー可愛くて…とにかく俺の事が大好きで」


みなみ…
並木さんを前にみなみへの想いが溢れ返る。


「最近は料理も上手くなってきたんだよ。最初の頃なんて大さじの意味さえ知らなかったんだぜ!?それが俺のためにって一生懸命勉強してくれてさ、俺マジで泣きそうになったね」


「…そうなんだ」


「それと笑顔がとにかく可愛いんだよ。みなみの笑顔のためなら俺、死ねる」


「…もういいよ」
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