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限界Lovers
第26章 決戦は金曜日
翌朝、並木さんに合わせて家を出た。


「お世話になりました」


「寝かせただけだけど」


「でも・・・ありがとうございます」


ペコリと頭を下げて昨夜のお礼を言うと、並木さんは珍しく微笑んでくれた。


「私・・・山下くんの大学時代のことは全く知らないけど元カノがどう出てもあなたはドンと構えてればいいと思う」


「ドンと・・・」


「“山下くんが迎えに来るまで帰らない”って言い切ってたあなたは悪くなかった」


そんな立派なモンじゃないんです。
ただの意地だし衝動的に飛び出しただけだし。


「そんな風に言ってもらっても本当は不安ばかりで・・・」


昨夜だって眠れなかった。
飛び出す私に呆れて日和さんと抱き合う姿が消しても消しても浮かんできて・・・


不安で怖くて・・・


「・・・それでいいんじゃない?」


「えっ・・・」


「態度なんてハッタリだもん。・・・でも後からついてくるから」


「えっと・・・」


良く分からない。
戸惑っていると並木さんがポンと背中を叩いた。


「頑張って」


そして駅へ続く道を彼女は歩き出す。
並木さんの背中は凛とした中に儚さが滲んだ華奢な背中。
そこに並木さんの本心が見えた気がして思わず声を掛けてしまった。


「並木さん!」


「何?」


「・・・今も遥斗の事好きですか?」


不自然なほど間が空いて瞳が揺れた。
・・・並木さんの気持ちを確信する。





私だったらできるだろうか・・・


好きな人の彼女を励ますようなこと・・・



「ライバルですね」


「ライバルにもならないわよ。山下くんの頭の中はアナタでいっぱいなんだもん」



独り言みたいに呟いて、そしてまた並木さんは歩き出した。



「また飲みましょうね!私、並木さんとはお友達になれる気がするんです!」


「気がするだけじゃない?でも・・・次は普通に飲めるといいけど」


並木さん・・・


「昨日のお礼に今度奢ります!」


「期待しないけど楽しみにしとくわ。でももう泊めないから飲み過ぎてもいいように面倒見係はガッチリ捕まえといて」



背中の雰囲気が柔らかく緩んだ。
何故だろう、ちょっとだけ泣きそうになった。


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