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限界Lovers
第31章 初めて記念日
それからしばらく、俺はみなみちゃんの店に顔を出さなかった。
押してダメなら引いてみろという言葉がある。
それに倣って二週間ほど・・・


いままで週二回は行っていたのに飯に行った途端にプッツリ二週間だ。
今頃みなみちゃんは心配でしかたないだろう。
「私、何かした!?」なんて悶々と俺の事ばかりを考えてるに違いない。
連絡先の交換をしなかったことを悔いてるに違いない。


・・・あと二週間は我慢だ。
そして俺を見て安心したみなみちゃんを飲みに誘う!


酒が入ればさすがのみなみちゃんも・・・


そんな妄想を支えに我慢すること更に一週間・・・
季節は九月になっていた。


一ヶ月は我慢すると決めたのにみなみちゃんに会えない日々は思ったより辛く、三週間で根を上げみなみちゃんに会いに行った。


あの笑顔が見たい・・・
あの笑顔が見たい・・・


中毒患者みたいにふらつきみなみちゃんを探し求める俺の目に入ったのは衝撃的な光景だった。
新しいバイトだろうか・・・みなみちゃんと同じ年くらいの男が居て、みなみちゃんが仕事を教えていた。


男の目はハートだった。
みなみちゃんは微笑みながら彼に何やら説明している。
俺が行っても行かなくても何ら彼女は変わってなかった。
それどころか余計な虫まで寄せ付けてしまった。


取られる・・・
俺が距離を取ってる間に取られてしまう・・・


ここで俺は初めて焦った。
みなみちゃんが彼に向けた笑顔は俺が見るものと何ら変わらないものだったから・・・


「みなみちゃん」


仕事中だというのに話し掛ける俺にみなみちゃんがこっちを向いた。


「あっ・・・」


「久しぶり」


みなみちゃんがキュッと口を結ぶ。


「仕事・・・何時に終わる?」


「・・・八時です」


「待ってる」


それだけ言って店を出た。
時間を潰してみなみちゃんが終わる時間に店に行くと数人のバイト仲間とみなみちゃんが裏口から出てきた。


そしてみんなと別れたところで声を掛けた。


「みなみちゃん!」


「・・・・・・」


よそよそしいみなみちゃん。
三週間も我慢した作戦はどうやら裏目にでてしまったようだ。



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