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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第7章 第2話・弐
「あなたがどうして」
どうして、こんなところに。
お民は夢中で後ずさった。
怖い、無性にこの男が怖かった。半月前に町人町の縹やの前で声をかけられた時、あの男―石澤嘉門はお民をずっと付けていたのだと言った。
では、やはり、あれから後も嘉門はお民をずっと付け回していたのだろうか。
この男のすることが尋常だとは思えなかった。最早、どこか狂っているとしか思えない。
「何故、逃げる」
嘉門が低い声で呟いた。
「俺はそなたを忘れられず、ずっとこうして心は虚ろだというに、そなたは何故、そのように生き生きと美しう輝いておるのだ」
お民は首を振った。
「止めて、来ないで」
お願いだから、もう自由にして。いつまでも私につきまとわないで、これ以上、あなたと過ごした昔を思い出せないで。
お民が心で叫んだ時、突如として鳩尾に軽い衝撃と痛みを憶えた。
「どうして―、こんなことをするの」
絶望の呟きと共に、お民の身体が花が落下するようにくずおれる。地面に倒れる寸前、嘉門がその身体を抱き止めた。
「やっと捕まえた」
嘉門が軽々とお民を抱え上げる。その重みもやわらかな膚も嘉門にとっては、すべてが愛おしい、懐かしいものに思える。
「もう、離さぬ。そなたは未来永劫、俺のものだ。そなたは最早、俺から逃れることはできぬ」
嘉門が魔界から響いてくる亡者のような声で笑う。くっくっと不気味な声を上げながら、嘉門は腕にかかる愛しい女の重みを確かな手応えとして実感していた。
どうして、こんなところに。
お民は夢中で後ずさった。
怖い、無性にこの男が怖かった。半月前に町人町の縹やの前で声をかけられた時、あの男―石澤嘉門はお民をずっと付けていたのだと言った。
では、やはり、あれから後も嘉門はお民をずっと付け回していたのだろうか。
この男のすることが尋常だとは思えなかった。最早、どこか狂っているとしか思えない。
「何故、逃げる」
嘉門が低い声で呟いた。
「俺はそなたを忘れられず、ずっとこうして心は虚ろだというに、そなたは何故、そのように生き生きと美しう輝いておるのだ」
お民は首を振った。
「止めて、来ないで」
お願いだから、もう自由にして。いつまでも私につきまとわないで、これ以上、あなたと過ごした昔を思い出せないで。
お民が心で叫んだ時、突如として鳩尾に軽い衝撃と痛みを憶えた。
「どうして―、こんなことをするの」
絶望の呟きと共に、お民の身体が花が落下するようにくずおれる。地面に倒れる寸前、嘉門がその身体を抱き止めた。
「やっと捕まえた」
嘉門が軽々とお民を抱え上げる。その重みもやわらかな膚も嘉門にとっては、すべてが愛おしい、懐かしいものに思える。
「もう、離さぬ。そなたは未来永劫、俺のものだ。そなたは最早、俺から逃れることはできぬ」
嘉門が魔界から響いてくる亡者のような声で笑う。くっくっと不気味な声を上げながら、嘉門は腕にかかる愛しい女の重みを確かな手応えとして実感していた。