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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第1章 壱
 三門屋は満面の笑みで応えた。
「いいえ、ご心配には及びません。石澤さま、どうかこの三門屋をお信じ下さりませ。三門屋信吾、少々、考えがございます」
「ホウ、知恵の固まりのようなそちがそのように自信たっぷりに申すからには、それだけの勝算があるからに違いなかろうの」
 嘉門が愉快げに言うのに、三門屋は頷いて見せた。
「どうかお任せ下さいませ」
「もっとも、そなたのその知恵が冴え渡るのは悪事のときに限ってのような気もするが」
「これはなかなか手厳しいことを仰せにございますなあ」
 三門屋はおどけた口調で言い、片手でピシャリと額を叩いた。
「まァ、良い。その方のその悪知恵のお陰で俺は欲しい物を手に入れることができるのだからな。そなたの手並み、とくと見せて貰おう」
 嘉門はさも面白そうに言い、また、低い声でひとしきり笑った。
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