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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第8章 第二話・参
 もしや、あれも悪阻の症状の一つであったのかもしれない。自分は男だし、おまけに父親になったこともないから、迂闊にも全く判らなかった。
 だが、お民は一度ならずか、二度まで懐妊したことがある。既に自分でも気付いていたはずだ。
 そう考えてゆけば、ここのところのお民の様子が妙だったことも頷けた。
―何故、何故なんだ、お民。
 どうして、自分にひと言告げてくれなかったのか。
 いや、あの女のことだ。そんなことが言えるはずもない。腹に宿した子が源治の子であれば、お民はすぐにでも恥じらいながらも歓んで報告しただろう。
 だが、腹の子の父親は源治ではない。源治とお民の間にはもう三ヵ月以上もの間、夫婦の交わりが絶えている。今、悪阻の時期であるというのであれば、懐妊が判ったばかり―、どう考えても、源治の子である可能性は限りなく低いというよりは、殆どあり得なかった。
 可哀想に、お民はどれほど懊悩し、悩んだことだろうか。
 お民の懐妊という予期せぬ事実が発覚した今、お民の失踪が石澤嘉門と繋がっているとは考えがたくなった。
 多分、お民は源治のことを思い、自ら身を退いたのだ。嘉門の子を宿した我が身は、最早、源治の側にはいられないと一人で勝手に判断して―。
 お民、俺は、いつだって、お前に側にいて欲しい。そう言ったじゃねえか。なのに、何で、俺に何も告げねえで、一人で勝手に悩んで決めて、挙げ句にいなくなっちまうんだよ。
「馬鹿野郎」
 源治の握りしめた拳が震えた。
―ねえ、お前さん。
 今日の昼、川原でお民が言おうとしたのは、何だったのだろう。
 あの時、お民は明らかに何か話したがっていた。自分があの時、もっと真剣にお民の言葉に耳を傾けていたら、真摯にお民の心の叫びに耳を傾けていたなら。
 お民の悩みの深さも、心からの叫びも聞き取ってやれたかもしれないのに。
―ん、どうした?
 源治が問い返したときのお民の表情が忘れられない。
―いいえ、ごめんなさい。何でもありません。
 少し淋しげにも見えた翳りのある微笑、その裏に潜む想いをくみ取ってやることができなかった。
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