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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第8章 第二話・参
「源治さん。お民さんのことなんですけどね。違っていたら申し訳ないと思うんだけど、もしかして、身籠もってるんじゃないかしらねえ」
「―あいつが、身籠もってるって―、っ、赤ン坊をですかい?」
 素っ頓狂な声を上げた源治を、おしまが面白いものでも見るように見つめた。
「そうですよ。あなたは知らないでしょうけど、私だって若い頃には、一度、子どもを生んだことがあるんですからね。経験者だから、見ていれば判ります」
「でも、おかみさん、旦那さんが、お二人には、子どもさんがいねえって」
 源治が思わず訊き返すと、おしまは遠い眼で笑った。
「うちの子は泣き声を上げなかった―、死産だったの。女の子だったのよ、桜の咲く頃だったから、うちの人がさくらって名前をつけて、生まれたら着せてやろうと私が縫った産着を着せて送り出しました」
 聞いているだけで、涙が出るような切ない話だった。
 岩次とおしま夫婦の間には、子ができなかったと聞いていたけれど、その裏には、こんな悲劇があったのだ。
「ごめんなさいね、辛気くさくなっちまって。私の昔話は良いのよ。それよりもお民さん、店で働いている最中も、時々、悪阻で苦しそうでしたよ。源治さんも心当たりがあるんじゃない? 悪阻は病気じゃないけど、大切なときだから。ちゃんと労ってあげないと駄目ですよ」
「―お民が赤ン坊を」
 源治の声がかすかに震えた。
 何も事情を知らぬおしまは、源治の狼狽え様を良いように誤解したらしい。
「初めておとっつぁんになるのですものねぇ。いつもは落ち着いてる源治さんが取り乱すのも無理はないわ」
 朗らかに言うおしまに、源治は礼を言って、その場を辞した。
 徳平店までの帰り道、源治はやり切れなかった。
 お民が懐妊しているというのは、恐らくは間違いないのではないか。
 そういえば、と、源治にも心当たりがあった。昨日の朝、お民と食事を取っている最中、お民が俄に苦しみ出した。気分でも悪いらしく、口許を押さえ、烈しく咳き込んでいた。その後、少し吐いてしまったのだ。
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