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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第11章 第三話・弐
 死人花とは、また何と不吉な禍々しい呼び名だと思っていたけれど、こうして眺めてみると、また違った風に思えてくる。
 愛する人が長い旅路を辿るその道が、黄泉路へと続く道がこのようなきれいな花に彩られているとしたら、見送る者はどれだけ心救われるだろう。こんな美しき光景を眺めながら、あの子が旅路を辿ると考えただけで、心が少しだけ慰められるような気がする。
 真っ暗な何もない淋しい道を逝かせるのは、あまりにも不憫で。可哀想で。
 お民の眼から大粒の涙が溢れ、頬をつたい落ちる。
 彼岸花は、死者を悼む花。だから、死人花。
 美しく咲き誇った紅い花が燃えている。
 お民には、この花たちが幼い我が子の死を悼み、これほどまでに見事に咲いたのだと思わずにはいられなかった。
 鮮やかな紅色が涙に滲む。
 お民は眼を伏せ、溢れ落ちる涙を拭おうともせずにその場に立ち尽くしていた。

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