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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第4章 四
 そうなれば、源治は、お民を淫らな女と罵り、蔑むだろう。自分を裏切ったと、お民を憎むようになるに違いない。
 自分が戻ることで起こるだろうすべての不幸を予想しても、お民はやっぱり源治の許に帰りたい。
―だって、私、お前さんのことを大好きなんだもの。私って、身勝手で我がままな女なのかしら。
 めぐる想いに応えはない。お民は物想いに耽りながら、深い眠りの底へと落ちていった。
 その夜は、久しぶりに手脚を伸ばしてぐっすりと眠ったせいか、怖ろしい夢は見なかった。嘉門の傍で夜毎見る夢は、お化けのような蜘蛛に追いかけられたり、紅蓮の焔に灼き尽くされようとする怖い夢ばかりで、いつも夜半にひどくうなされてめざめることが多い。
 夢の中で、その夜、お民は源治に逢った。
 ひどく哀しそうな顔をした源治が物言いたげにお民を見つめている。恋しい男に逢えたのは嬉しかったけれど、あんな辛そうな良人の顔を見るのは初めてだったので、気がかりだった。
 その夜の夢は怖くはなかったけれど、哀しい夢だった。
―逢いたい、お前さん。逢いたいよ。
 夜半、お民は衾(ふすま)をすっぽりと被って、声を殺して布団の中で泣いた。控えの間で眠る侍女に泣き声を聞かれたくはなかった。
 泣いている中に、お民は再び眠ったようだった。
 だが、この後、更に残酷な運命がお民を見舞うことになると、この時、お民は考えてもいなかったのである。
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