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私達が人間を辞めた日
第8章 儚い指先
「何ですか...これ...まさか...」
震えた声が洩れる...返答等無く、作業服の男に両足を掴まれ...寿が蝋燭にライターで点火した。
蝋燭が真っ白な事からSM専用の低温蝋燭のような生易しい物じゃないだろう...人に対して蝋を垂らすような用途を想定して作った物でない事は確実だ...
「あ...あ...」
恐怖に私の歯がカチカチと鳴る...
寿は蝋燭の火で煙草に火を着けると椅子にどさりと座る。このまま待っているという構え....
待つ...?何を...決まっている...この溢れ出した蝋が私を痛め付ける事をだ...
乱れる吐息を懸命に抑える...私が動けば火元の凹みに溜まっている蝋がより多く溢れるはずだ。
蝋は蝋燭を伝い...少し進んだ所で空気に冷まされ再び固まる。
そしてまた伝い...先程よりほんの数ミリだけ進んだ所で固まる...
「嫌...嫌...」
じわじわと時間を掛けて迫るその恐怖に涙目で訴える...無駄だと知っていても...
当然辞めて貰える事等無い...クスクスと寿の笑いが聞こえて来るだけ...
目に見えて短くなった蝋燭...溢れた蝋は蝋燭の側面を少しずつ溶かし...まるで蝋の通り道を作っているようだ。
そして遂に...蝋燭の根元...つまり私の股に...蝋が届いた...
「ああああああああーーー!!!」
直接炙られたと錯覚するような熱さに...私はのたうち回った。