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私達が人間を辞めた日
第10章 孤独な相部屋
私は歩きながら絶望に染まる18番を見る。
その顔を見ると捨て台詞の一つくらいは吐きたくなるが、ここで勝手な行動をする程馬鹿では無い。
それでも若干足が止まりかけた私に寿は言った。
「18番が憎いんだろう?チャンスを与えてやる」
私の心理を見透かしたような言葉にドキリとした。寿が18番を顎でしゃくると、作業服の男が18番に近付き...リードと同じ場所で18番の手枷を固定する。18番は両手を頭上に上げたまま身動きできないようだ。
寿は私の手枷を外すと、腰に差していた鞭を私に握らせた...
「好きにしていいぞ。特別に許可してやる」
「...はい」
悪魔の囁きに対して無意識に返事をした私は、18番の正面に立った。
私はどんな顔をしているのだろうか...私の顔を見ただけでガクガクと情けなく震える18番...
憎い...その単語を聞かされると、今までの怒りが...屈辱が...増殖しながら思い起こされていく。
...そう...これは命令なんだ...寿の命令だから...私は悪くない...
それにこの女は...私から食事を奪ってきたんだ....
こんな状況で食事を奪うなんて...そうだ...私を殺そうとしたのと同じだ。
これは逆らえない命令であり...正当防衛でもある...
「ふふっ...」
感じた事の無い程の黒い感情が...胸の内から沸き上がり...口元から笑い声となって溢れた。