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私達が人間を辞めた日
第11章 永遠に...
何度も躓き...倒れ...立たされ...倒れ...立たされ...視界にはぼんやりと館が見える。
またここに戻るんだ...戻って...また男に犯されるの?
今までは...どうやって耐えてきたんだっけ...
...そうだ...涼ちゃんの為...でも涼ちゃんはもう...居ない...
じゃあ私は何の為に...もう生きる希望も...理由も無い...
「...もう...殺してください...」
私は無意識に呟いていた...いつの間にか車庫まで歩いていたようで、トラックの間で立ち止まる。
男は私の顔を覗き込むと、私の精神状態に気付いたのだろう...納得した様子で無線機を取り出し何か話しているが、今の私には何も聞こえない...
ただぼんやりと視線を動かしていると、トラックの荷台の隙間に小さな五ミリ程の凹みが見えた。
この時の私が何を思ったのかは解らない...ゆっくりとした動作で左手の指輪を外し...その隙間に滑り込ませる。
涼から貰った指輪...それを今の汚れてしまった私が着けるのを躊躇ったから、ただ捨てるようにこんな行為をしたのかもしれない...
そう...愚かな私はずっと騙され続け、涼以外の何人もの男に抱かれたばかりではなく...誰の子かも解らない子供を妊娠している...
涼ちゃん...天国で会えたら...こんな私を...許してくれる...?
しかし...有り得るのだろうか。誰かがこのトラックから指輪を発見し、この失踪事件と関連付けるような事が...
それは最早賭けでもなければ希望的観測ですら無い...そもそもこのトラックが使われているのかも定かではないから...
「来い...お前の要望に応えて貰えるぞ?」
作業服の男は私の行動に気付いた様子も無く...リードを引っ張った...