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私達が人間を辞めた日
第12章 枯れないディアスキア
思い出すんだ...幼い頃の私はどうやってあの地獄を乗り越えてきたの?
ただ周りの音も気配も遮断して...自分の世界に閉じ籠っていたじゃない。
私は独り...この世界に独りだけ...親も友達も...頼る人も恋人だって要らない...独りでいい...
洗浄という行為に溢れ出る不快感も羞恥心もゆっくりと引いていく...深呼吸して瞳を開けると、既に体を拭かれていた。
ありとあらゆる物から逃げる事は得意だ...何も考えないように作業服の男についていく。
もっとも...ありとあらゆる物を解決する事は一番苦手...今の私は何も考えてないだけで、これから先の事を乗り切る算段は微塵も思い浮かばない。
いかにも...というような扉の前で立ち止まる。
作業服の男はノックの後扉を開け、私の視界に二つのシルエットが浮かび上がった。
「ああッ...寿様...もっと..んッ!!」
背中を向けて腰を振る男...この男が寿だろう。そして寿に貫かれて甘い声を上げる女性...
寿が腰を止めて振り向くと、体中に電流が流れたような衝撃を感じた。寿は「あの男」に似ている...容姿ではなく、その暴力的な...人を傷つける事に何の迷いも感じないような雰囲気が...私を硬直させる。
そんな私の動揺をよそに、女性は残念そうに言った。
「えぇー...寿様ぁ。もう終わっちゃうんですか?」
「今日は新入りが居るからな。姫歌(ヒメカ)はまた後で相手してやる」
寿に姫歌と呼ばれた女性はようやく私の存在に気付いたようで私を見て怨めしそうな顔をする。
昨日の説明では私達は番号で呼ばれると言われたのだが、この女性は何か特別なのだろうか...首輪を見ると、番号ではなく「G」と記されていた...