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私達が人間を辞めた日
第14章 カウントダウン

「ッ...あああああああッ!!!!!痛ああああッ!!!やああああああ!!!」

額から両目の間を通過し...鼻の上から口の横まで...斜め一直線を刃が通る感覚...
一瞬だけ冷たいと感じ...また一瞬で熱さを感じ...そして一秒程遅れて沸き上がる激痛。
あまり深くはない傷口から伝う血が顎を通り、ポタポタと落ちる。
一歩間違えばナイフは眼球を切り、失明していたであろう...寿はそんな事等気にしていないようだ...

ほんの僅か...諦め切れなかった日常へ帰還するという願いも、踏みにじられるような傷...
私はもう人前に出る事も...幸せな家庭を築く事もできない...
顔にすら...一生消えない傷を付けられてしまった...

寿は放心する私の顎を持ち上げ、遥か...気が遠くなるような高い場所から...私に告げる。

「これはお前が俺の道具になった証だ...これでお前が人間らしい暮らしを送る事は永遠に叶わないな?」
「...はい」

あれ...?なんで私は素直に返事なんかしたんだろう。
そっか...私が逆らったら理佳さんが危ないんだった。
せめて...理佳さんには人間として生きて貰いたいな...

寿が呼び鈴を鳴らすと現れた作業服の男が、私の拘束を外す。
そして両手両足を枷で拘束し直し、何故かガムテープで口まで塞いだ私を荷台に乗せると、荷台を押して部屋から出て行く。
本当に道具扱いだ...

部屋を出る瞬間目が合った寿は...また新しい余興を期待しているように見えた。
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