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私達が人間を辞めた日
第19章 【最終章・私達の答え】前編~真夜中の侵入者~
「本当に...こんな山奥に人がいるんでしょうか...?」
ワゴン車を運転中の咲枝宏(サキエダヒロシ)は助手席に座る俺に呟くように問い掛けた。
俺は桜から預かったGPSを覗いて答える。
「ええ...確かに反応はこの方角ですが...」
自信なさそうに答えてしまうのにも理由がある。
桜は念のために発信器を仕込んでから手がかりを追うと言った。
しかし、今車が走っている整備されていない道は、日本にこんな場所があったのかと驚くような山奥だ。
俺以外も不穏な予感を浮かべている人はいるだろうが、口に出す事はしない。
その予感とは...この失踪事件が単なる大量殺人だった場合...こんな場所で生きたままの桜に会えるのかという不安だ。
...こんな山奥なら...人を拉致しているというよりも...死体を遺棄しているという方がしっくりきてしまうから...
それが考えられる最悪の状況...その次は、運転中の宏の息子の涼以外の被害者が若い女性ばかりという事から、加害者が下卑た強姦目的であれば...桜の服を剥ぎ取り、山奥に埋めて証拠を隠滅している可能性だ。
桜が発信器をどこに仕込んでいるのかは知らないが、おそらく服のどこかに仕込んでいるのだろう。