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私達が人間を辞めた日
第20章 【最終章・私達の答え】後編~運命の導き~
私は座ったままぼんやりと灯りを見ていた。
複数の人物が檻の中を確かめるように、順番に檻の前を横切り...私の檻の前へ...
照らす光に目を細めると、その人物の顔がうっすらと見えた。
「泉っ!!」
お父さん...?
私に声を圧し殺した叫びを聞かせたのは...父の直道だ。
幻聴に続いて幻覚でも見ているのだろうか...しかし...その声も...姿も...父の物だ。普段優しい父が見せた事の無い怒りの顔は、幻覚でも想像できない顔だろう...
トクン...氷のように冷たくなっていた何かに...微かな熱が戻った感覚...
助けに来てくれたの...?こんな私を...?
枯れていたはずの涙が溢れる。直道が私に歩み寄りながら口を開きかけた瞬間、数日間あまり働いていなかった思考が、今までの遅れを取り戻すように働き...素早い動作で立てた人差し指を口の前に出す。
その意図を察してくれたらしい直道は、開きかけた口を閉じ、私に問うような視線を送る。
そうだ...盗聴されてるんだ...
先程の直道の声はさすがに拾われないだろうが、今会話等したら全てが...終わってしまう。
左手で首輪を...右手で自分の耳を指差す。
お願い気付いて!!首輪で盗聴されているの!!