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私達が人間を辞めた日
第20章 【最終章・私達の答え】後編~運命の導き~
【泉side】
お願いします...お願いします...
檻の中で強く祈りながら運命の宣告を待つ。
私だけでは無い...この檻にいる女性達全てが、そんな願いに身を引き裂かれる思いだろう。作業服ではない男の訪問は初めてで、この深夜という時間帯も...呼び出しではないという事からも、直道達が私達を助けに来たという状況に感ずいている人も少なくはないはずだ。
今...この館で初めて...私達の心に微かな光が灯っている...
諦めるしかなかった救済...日常...家族...人生...それが...再び手に入るかもしれない。
お願いします...もう一生...幸運なんて無くていいから...今一度だけ...お父さんがこの檻の鍵を見つけるという...そんな些細な幸運を...ください...
暗闇ではっきりとは見えないが...緊張感のある吐息が聞こえる...
皆同じ思いだ...出たい...ここから出たい...自分の居場所を...尊厳を...取り戻したい。
ギィ...扉が開く...
入って来たのは...直道達...手には...鍵...私達が地獄から脱出する為のチケット...
直道は一目散に私の檻に駆け寄り、私を安心させる笑みを浮かべ...檻のプレートを見ると、手に持った鍵の一つを摘まみ上げた。
それを鍵穴に差し込むまでの数秒が何分にも思えた。