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私達が人間を辞めた日
第2章 失われた日常
檻の中には毛布が畳んで置いてあった。寒さと裸な事から急いで毛布で身体を包み、毛布以外の物も発見する。
檻の隅に置かれたバケツ、中を除くと三分の一程水が入っていて隣にティッシュが置いてあった。
...まさかこれで用を足せというのだろうか...
部屋の異臭の正体に勘づき、身体がぶるりと震える...
「あの...」
誰でもいい...とにかくこの意味不明な状況を知らなければ。寝ている人達に声をかけたと同時に檻の無い辺に有る扉が開いた。
思わず背後の壁に背中を預けると足音がゆっくりと近いて来る....
足音は私の檻の正面で消える。作業服のような物を着た男が屈んでこちらを見て言った。
「起きたか。簡潔にお前のこれからの生活について説明する...一度しか言わないから良く聞けよ?」
「...え?」
男は怯える私に構わず淡々と話し始める。
「この館からは絶対に逃げられないし助けも来ない...家に帰る事はもう諦めろ」
「そんな..ここってどこなんですか?私はなんでここに...?」
いきなりとんでもない事を言われ、思わず質問した私の声は震えていたし涙も滲んでいた。
しかし男は鋭い声音で私を睨みながら言った。
「余計な質問はするな。お前の人生はもう終わった、それだけ理解してろ」
全く余計な事ではないが、男が放つ威圧感に言葉を飲み込んでしまう。