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私達が人間を辞めた日
第2章 失われた日常
「悲惨...?」
恐怖が煽られる単語につい問い返す。
「ああ...少なくとも痛い目に合うか...最悪の場合....殺されるぞ?」
全身が総毛立ち、言葉の意味を理解した途端...滲んでいた涙が頬を伝う。
「いやぁ...嫌です...助けて...」
私の精一杯の懇願に男は何が可笑しいのか楽しそうに応えた。
「無理だな。勝手に逃がすと思うか?死にたくないなら俺達や寿様に従順になれよ。あっ....殺す前は俺達に自由にさせてもらうから、その時は宜しくな」
男の下卑た笑いを聞きながら私は絶望していた。
もう家に帰る事も...人間らしい生活も...私には望めない...
「それと....」
放心する意識が引き戻される。
「お前達は番号で呼ぶ。お前は7番だから覚えておけ」
男は鉄格子の隅の小さなプレートをとんとんと叩く。恐らくそのプレートに番号が書いてあるのだろう...動物園だってそんな呼び方をしないのに...
「わかったか7番」
男の呼び掛け....『嫌われれば殺す』という言葉が頭の中で反響する...
「....わかり...ました...」
「よし、じゃあ明日...いや...もう朝か。今深夜三時だから大人しく寝てろ。朝飯は八時だ」
男が去った後。周囲の人達を起こす気になれず、毛布にくるまり一晩中すすり泣いた。
誰も好き好んでこんな場所に居るはずない...という事はここから逃げれないし、どんな質問をしても無意味だろう。
私は...もう...日常には...戻れないんだ...