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私達が人間を辞めた日
第2章 失われた日常
ぴんぽーん
呼び鈴のような音が鳴り響き目を覚ます。少しだけ寝ていたようだ。
周囲の人達が身体を起こす気配がする。
部屋にはいつの間にか照明が着いていて、皆若い女性だという事が分かる。
私も身体を起こすと正面の檻の人達がこちらを見ていたが直ぐに興味を失ったようで、皆小窓からバケツを出す。
その直後、扉が開き四人の男が荷台をおして入ってきた。私は毛布で身体を隠したが皆裸体を隠す事もしない...
その光景が不気味で仕方なかった。
正面の女性...先程私を見ていた一人を改めて見ると身体がすくんだ...
身体中酷い痣...その痣がここでの生活の残酷さを物語っている。
「おい...バケツは?」
不意に男に話し掛けられ意識が切り替えられた。
小窓の前にはペットボトルの水とパンが一つ転がっている。トレイなど無く...床の上にそのまま...
「おい!」
きつめの声が鋭く響き、質問の意味をようやく理解した。
「あの...バケツ...使ってません...」
怯えながらも答えると、男は無言で隣の檻に移動する。
どうやら二人で二組の男が食事を入れる者とバケツを回収する者に別れて檻を回っているらしい。
皆は床に転がるパンを躊躇無く食べ始めるが、私にはどうしても食欲が沸かなかった。
四人の男達が扉から出ると、入れ替わりで二人の男が入って来て...言った。
「7番!!早く食事を済ませろ。寿様が御呼びだ」