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限りの月
第9章 記憶の欠片
本殿の前でお賽銭を入れて、二礼二拍手する。

その時ふと視線を感じた。
美織は何気なしに後ろを振り返ってみる。

「!」

鳥居のそばに一人佇む男がいた。
こちらを見て、ひどく驚いた顔をしている。

「どうしたの?みお…り…」

固まる美織を横目で見て、妙子は後ろを振り返った。


「ひろ…せ…?」

妙子の瞳は大きく開かれる。

「…広瀬!!」

その名を呼ぶと同時に、妙子は走り出した。


「広瀬っ!! ひろせぇ…!!」

泣きそうになりながらも、何度もその名前を叫ぶ。
だが広瀬は一瞬悲しそうな顔をしたかと思うと、そのまま姿を消した。

「…っ!!」

妙子が鳥居にたどり着いた時にはもう誰もいない。


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