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限りの月
第9章 記憶の欠片
「一度だけ、広瀬に抱かれたことがあるの…」
「えっ…」
「裸で迫って、拒む広瀬のモノを無理やり咥えて…無理やり抱いてもらったの」
「…」
「心が手に入らないなら、身体だけでも繋がっていたかった…」
「…」
「だけど事が終わった後は余計虚しくて…あたしは広瀬を傷つけた…」

そう言って妙子は唇をキュッと結んだ。

「…あたしほんとはね、ずっとわかってたの。広瀬の好きな人が誰なのか…」

美織のこめかみがピクッと動く。

「…広瀬はきっと、彼女のもとに行ったんだと思う…」

(彼女…?)

「…美織、ごめんね…今日は帰る…」

そこまで話すと妙子はフラフラと歩き出した。


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