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限りの月
第9章 記憶の欠片
「妙子…」

かける言葉が見つからず、美織はただ黙って妙子の姿を見送った。

なにか、心がモヤモヤする。

妙子が広瀬くんのこと好きだとか関係をもったとかそういうことではなくて、もっと深いこと。

それがなんなのかまだわからないけれど、妙子の気持ちは誰かに似ていると思った。

(でもそこまで誰かを愛せるなんて…少し羨ましいな…)

脳裏に哲の顔が浮かんだ。

(私は哲さんのどこが好きで結婚したんだろう…)

美織はそんなことを考えながら、駅の階段を下り始めた。

(そもそもどうやって出会ったんだっけ…?)

記憶を遡るが、なぜか思い出せない。


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