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限りの月
第9章 記憶の欠片
(……昨日エレベーターで会っただけなのに覚えててくれたんだ…)

こんな人混みの中で自分に気づいてくれたことに、美織は少し嬉しくなった。

「あれから大丈夫だった?」
「え…何がですか?」

美織はドキッとする。

「もう痴漢にあってない?」
「あ…はい、大丈夫、です…」

(…びっくりした。あの時のこと気付かれたのかと思った…)

美織はホッと小さく息を吐いた。

「それなら良かった」

ドキッ…

優しい瞳で微笑する紫音の姿を見て、美織の胸は高鳴る。

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