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限りの月
第10章 歪んだ愛
コンビニの扉付近でビクビクと身体を震わせている美織の姿が確認できた。さいわい近くに誰もおらず、店員も接客をしていて見ていなかった。

だが、こっちには背をむけていて肝心の顔が見えない。
なので、美織に電話をかけた。

「美織、だめじゃないか。ちゃんと顔を見せてくれないと」

『……はあ、はあっ……』

美織の息遣いだけが聞こえる。

「ほら、雑誌コーナーに立ってこっちを見るんだ」

美織は身体を震わせながら、窓側に向かって立った。顔は真っ赤だ。「なぜスイッチを押したの?」と責めるように涙目でこっちを見ている。

(バカだな、美織。押さないわけがないだろ?)

美織は全く自分を理解していない。
でも嫌なくせに、なんだかんだ従う美織も本当は嫌じゃないはずだ。

「もういいぞ、美織。戻ってこい」

その時、美織の隣にフードを被った背の高い男が立ち並んだ。




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