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喘ぐなら、彼の腕の中で
第9章 胃薬と酔い止め


* * *


「なにそのヒールの高い靴」
「……!」
「もっと歩きやすいのに履き替えてこい」
「はぁ? だってどこ行くのよ!?」
「早くしろ」


ビジューの付いた、休日用のお気に入りのパンプスを履いたというのに
助手席のドアを開いたと同時に、莉央に一発で却下された。

なによ~~!
あんたが超絶イケてる私服を着てるから、私も合わせなきゃってちょっと頑張ったのに!

ブツブツ言いながら自分の部屋に戻って、エナメルのフラットシューズを引っ張り出した。


「……本当にどこに行くんだろう」


莉央の休日の過ごし方なんて知らないし、興味すらなかったから見当もつかない。

歩きやすい靴とか言ってる時点で、買い物や映画なんかのデートじみた事をするわけでもなさそうだし………

ハッ!
……まさか

あの体型維持の為に、どこかトレーニングをしに行くとか……!?



「……ねぇ。
ジャージの方がいい?」



とりあえず靴だけ履き換えて戻ったけど、乗る前に一応聞いてみる。


「は? 別に着たいなら着てもいいけど」

「いや、着たくはないんだけど…」

「春色で沙月によく似合ってる」

「……!」

「そのままでいいから早く乗れ」


……そーいうこと、お世辞だとしてもサラリと言わないでください。

褒められ慣れてないから、不覚にもキュンとしてしまう。




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