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喘ぐなら、彼の腕の中で
第9章 胃薬と酔い止め


………あのね。

普通、好きでもない男にこんなセリフを言われたら、軽く引いてしまうと思うんだ。

だけど普段優しい微笑みなんて皆無の男が、堪らなくセクシーな声で言ったわけで

しかもこの男なら、絶対実行するんだろうなって期待もあるわけで


「……じゃあ、お手並み拝見するわ」


とんでもなく心臓がドキドキして、冷静を装うのに必死だったから
可愛げもなく、その一言を言うので精一杯だった。


……困る。
ほんと困る。

私、そんなキャラじゃないんだってば。

この胸がキュンと狭くなる感じ、どうにかしてほしい。


きっと、私の顔は真っ赤だから

莉央にバレたくなくて、その後はずっと窓からの景色を眺めていた。






* * *


湾岸線で臨海エリアに入ると、莉央の運転席側に東京湾が見えてきた。

会社からそれほど遠くないけど、この辺りは公園や工場が多いから、あまり来ないんだよね。


「………!」


快適に進んでいた道路が、次第に混み合ってくる。

通り抜けるのかと思っていたのに
出入口の列に続き、莉央はハンドルを切った。


「……え、莉央……?」


渋滞の理由は一目瞭然。
広大な駐車場のその先に、お城が見えているんです。


……い、いやいや、まさか。
そんなはずはない。


だって、私もそうだけど

どう考えても、夢と魔法の国にあなたは似合わない。





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