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喘ぐなら、彼の腕の中で
第9章 胃薬と酔い止め

「……ここまで来てなんだけど。
目的地、間違えてない?」
陽気な音楽が流れる中
大勢の来場客の流れと共に、その入口の前に到着すると
駐車場からここまで無言の莉央に、私は恐る恐る声をかけた。
日本で1番有名な総合遊園地。
休日とだけあって多くの家族連れと恋人達が、皆楽しそうに入場していく。
「間違ってない」
「朝ごはん食べるんじゃなかったの?」
「入ったらすぐ食う。食わねぇと戦が出来ない」
い、戦?
何と戦う気ですか?
明らかに様子がおかしい莉央を、横から見上げると
まるで戦闘態勢にでも入っているかのように、その顔は意味不明な攻撃力に満ちていた。
「こんな夢と希望が溢れる場所で、そんな顔してるのあんたくらいよ」
「うるせーな。
精神統一してんだから話かけんな」
「は、はぁ?」
「行くぞ」
え、行くの!?
本当に!?
早足で進む莉央の後ろに付いていき、入口でチケットを購入する。
エントランスを通り抜けて中に入ると、そこは別世界のようにキラキラと輝いていた。
「わ~~!
久しぶりすぎて、なんか新鮮♡」
ここに来たのは高校生以来だ。
25歳の私でもルンルン気分になってしまう。
……だけど
賑やかな空気にすっかり感化され、テンションが上がった私の横で
青ざめた表情の莉央が、石のように固まっていた。
………あなた、誰?

