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喘ぐなら、彼の腕の中で
第9章 胃薬と酔い止め


「あ、私あの店がいい!
ワッフル専門のカフェみたいだよ」


園内マップを手に、私はウキウキしながらそのお店を目指す。


「お腹空いた」
「……」
「早く行こうよ」


莉央は無表情のまま、黙って足を踏み出した。

このドSで隙の無い27歳の男が、夢いっぱい楽しさいっぱいの空間にいるってだけで、何だか笑ってしまう。

さっきから妙に大人しいのは、やっぱり苦手なんでしょ?
だって、めちゃくちゃ浮いてるもん。


“ 泣いた時間の倍以上、思いっきり笑うことだ ”


それがここだとするなら、莉央のチョイスは案外普通だったと言える。

でもいいんだ。
私、もう既に超楽しいから。


「私これにする。キャラメルバナナとジェラートのワッフル。
莉央は?」

「マジでそんなデカイの食うのかよ。
太るぞ」

「うるさいな、ここで我慢する必要ないでしょ。
さっさと決めてよ」

「……お前選んで。
1番甘くないやつ」


莉央はメニューを閉じて溜息をついた。



………そうだった。

この男、昔から甘いもの全般食べられないんだ。




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