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喘ぐなら、彼の腕の中で
第9章 胃薬と酔い止め


「あ! あのウォータースライダーまだあるんだ!」


丸太型のボートが、直角並みの傾斜から滝つぼへと落ちていく。

ダイブする瞬間、写真撮られるんだよね。
高校の友達全員でポーズとったりして、色々思い出して懐かしいなぁ。


「あっちにしようぜ」


ウォータースライダーの入口へ向かおうとすると、莉央が別の方向を指さした。
空中に線路が敷かれた蒸気機関車に、小さな子供たちの列が出来ている。


「あれ、パーク内を一周するだけよ」

「すげぇ面白そう」

「面白いのはこっちだよ。
落ちる瞬間、体が吹き飛びそうになるんだから」

「………」


無言になった莉央が、じっと私を見下ろす。

その訴えかける瞳を見つめ返しながら、笑いを堪えるのに必死な私。



……もうね、分かっちゃったよ。

今朝、マンションで “ 予防 ” と言いながら飲んでいた2種類の薬。

胃薬の効果があったかは分からないけど、もうひとつの効き目もあるか試したいじゃない?


「いいのよ、“ 怖い ” なら無理しなくて。
“ 誰でも ” 乗れる汽車にしよっか……」

「黙れ。犯すぞ」


莉央は思いっきり不機嫌そうな顔で、水しぶきの上がるアトラクションへと足を進めた。


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