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喘ぐなら、彼の腕の中で
第9章 胃薬と酔い止め

* * *
─── 夜の7時。
夕陽が沈んで、辺りが電飾の明かりに包まれたころ
疲れを隠せなくなった莉央が、蕁麻疹でも発症しそうなくらいぐったりし始めたので
私達はテーマパークを後にし、海沿いを進んだ先のカフェに入った。
ワッフル以外何も口にしていないのに、既に胸焼けしてるという莉央と、彼に買い与えられた数々の食べ物で既にお腹いっぱいの私。
東京湾に沿った外のテラス席に座って、お互いコーヒーだけ注文した。
「あの徹底した接客サービス見たか?」
煙草に火をつけながら、莉央が続ける。
「外部を完全に遮断して、日常を排除している。
コンセプト維持の為とはいえすげー企業努力」
総合営業職らしい感想。
やっと普段の莉央に戻った。
「完璧なマニュアルの元で、相当教育されてるな」
「うん、みんな笑顔で迎えてくれるものね」
「マジで信じらんねぇ。
なんだっけ、あの熊の着ぐるみ」
「○○○○だよ」
「お前、あれはキツいぞ。
ガキ共に囲まれて終始笑顔なんて拷問だ」
「………」
「俺だったら耐えられない」
ぶっきらぼうにそう言い放った莉央だけど……私見ちゃったんだよね。
その熊のキャラクターに握手を求められたとき、ちょっと嬉しそうな顔して手を差し出した瞬間を。
・・・やばい。
思い出しちゃってまた顔が……
「……なんだよ」
莉央が私を睨みつける。
「……なんでもない」
「顔に出てる」
「ご、ごめん」
謝った途端にまた吹き出してしまった。
だめだ、今は莉央を見るだけで笑っちゃう。

