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喘ぐなら、彼の腕の中で
第9章 胃薬と酔い止め


さっきまで心地よかった風が、急に冷えたように感じる。
2本目の煙草を咥えた莉央を、じっと見つめた。


……莉央……

あなたが言った言葉は確かに理解できないし、やっぱり歪んでるなって思う。

莉央が本当は何を考えているのかも、さっぱり分からない。


でも、私はこれでも20年、あなたと幼なじみを続けてきたから

その表情のない顔の裏側に、誰も知らない何かの “ 闇 ” を隠してるってことだけは分かる。



それに……莉央はひとつ誤解してる。


“ 狂う程好きな相手がいること
それはSEXする相手じゃなくてもいい ”


つまり、莉央を好きでも、好きじゃなくてもいいってこと。

だけど、多分ほとんどの女性が前者なんじゃないかな。
莉央を一度でも知ってしまえば、意思とは裏腹にどっぷりと快楽に堕ちてしまう。

でも、それは危機的なシチュエーションでも、莉央が兼ね備えるテクニックでもない。

耳元で囁かれるあなたの色気のある声、ときめくような言葉やちょっとした仕草で

きっとみんな、心はいらないといったあなたに
溺れてしまうほど、心まで侵食されているんだよ。


………その証拠に

私は途中から

芹澤さんを思い浮かべることなんて、すっかり忘れてたんだよ……



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