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喘ぐなら、彼の腕の中で
第10章 一発KO


亜美の後ろ姿を追う前に、視線に気付いて営業部に目を向けると
後輩くんがせっせとデータを入力している横で、莉央が私を真っ直ぐ見ていた。

そして、分かりやすく溜息をつかれる。


「………!!」


何よ!
その憐れみというか蔑んだ目は!

“ バカじゃねーの? ”

まるでそんな声が聞こえてきそうだ。


~~~だって仕方ないじゃない!
亜美に罪はないんだもの。


そりゃね、できるもんなら私だってリセットしたいわよ。
でも、同期であり女である以上、ここで無視することなんてできないの。

女ってそーいうもんなの!
ほんっと面倒くさいわ!!


心で無意味な説明をして、莉央を睨み返すと
ぷいっと顔を背けてフロアを後にした。



* * *



「見て♡
たまたま携帯を手に持ってて、写真撮っちゃった♪」

「……わぁ…愛されてるねぇ……」


先週に引き続き
温泉旅行の話を一通り聞いた後、亜美が携帯の写真を見せてきた。

……これ、たまたまって状況なのかな?

亜美の肩に手を回して、頬にキスする芹澤さん。
亜美の目線はバッチリ上目使いでカメラを見つめている。


「この後大変だったんだよ。
ここ駅のホームなんだけど、電車が来てるのに芹澤さん離れてくれなくて」

「……へぇ」

「旅行中ずっと寝かせてくれなかったのに、もっと一緒に居たいって言われたの。
その時の芹澤さん、どんな心境なのかな?」

「…………」




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