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喘ぐなら、彼の腕の中で
第10章 一発KO


「……沙月。
俺の読みは外れたけど、お人好しのお前もいいかげん気付いただろ?」

「……!」


莉央は煙草を潰すと、私を真っ直ぐ見つめた。


「あの女は宇宙人だと思え。
お前の精神を侵略されない為にも、距離を置いた方がい。
相手にしない、近付かない」

「……でも…」

「心配するな。
あの生物は水を与えなくても図太く生きるから」

「……」

「気を遣ってやるレベルじゃねーよ。
深入りしたらこっちが枯れちまう」


莉央がはぁ~っと大きくため息をついた。


……確かに。

今までの亜美の話が、私を芹澤さんから遠ざける為じゃなかったんだとしても
今後ずっとこの感じが続くのは勘弁してほしいな。

無視するまではしないにしても、莉央の言う通り回数を減らせばマシになるかも。


「……そうだね。 そうする」


あ……なんか一気に心が軽くなった感じ。

午前中の芹澤さんの件もあったし、思った以上にダメージ受けていたのかも。

亜美に言ってくれた嫌味と、私に与えてくれた勇気

………また、莉央の言葉に助けられちゃったな。


「あんたの暴言。
もし芹澤さんが聞いてたら殴られるわよ」


1時5分前になったので、莉央と一緒にエレベーターに向かう。


「知るか。
浮気男ってバラさなかったんだから、逆に感謝するべきだろ」

「あ!それ言ってくれれば良かったのに!
亜美の為にも……」

「そしたらお前に被害がいっちまうだろ」


………!

ドクンと心臓が鳴って、顔を上げると

莉央も私を見た。


「波風立てると面倒だしな。
……もう忘れろよ。思い出す価値もねぇ」



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