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喘ぐなら、彼の腕の中で
第11章 忘れられない日


波の音と、風の音。

その響きと共に、私の耳に届いた翔ちゃんの言葉。


“ 初めて俺を殴って、初めて俺に涙を見せた日 ”


頭の中でリピートしたけど、衝撃過ぎて全身が硬直する。

放心する私を見て翔ちゃんは微笑むと、海を見つめながら静かに続けた。


「俺と莉央、似てないだろ?」

「……え? う、うん…?」


さっきの話と繋がらない質問に一瞬戸惑う。

すると……



「半分血が繋がってない。
父親は一緒だけど、母親が違う」

「………!!」

「今一緒にあの家にいる母親……沙月が知ってるのは、兄貴と俺のおふくろだ。
つまり、莉央だけ腹違いの子なんだよ」



翔ちゃんが低い声で言った言葉で、頭が真っ白になる。

驚愕する告白に理解が追いつかない。


……そんなの、初めて聞いた。

20年間、一度もそんなこと………


「驚いたよねー、唐突にごめんな。
沙月の両親は知ってるけど、言わないでいてくれていたんだ」

「……っ」

「よく考えてみろよ。
一翔(かずと)・翔太ときてんのに、次に莉央ってなんでやねんって感じじゃない?」


翔ちゃんはふっと笑って、静かに続ける。


「兄弟であることには変わりないし、言う必要も無いと思ったんだけど。
……沙月が莉央を好きになったのなら、伝えた方が良いと思ってね」

「………!!」

「バレバレ。
お前、ほんと昔から分かりやすいのな」





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