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喘ぐなら、彼の腕の中で
第11章 忘れられない日


「話が逸れたな」


翔ちゃんは煙を空に向かって放つと、低い声で続けた。


「沙月さ。
俺に告白した後、海にいるお前のところに莉央が来ただろ?」

「……え!? う、うん…」

「その時、俺にフラれたって莉央に言った?」


………翔ちゃんに聞かれて、15年前の記憶を呼び戻す。

あの時は確か……フラれたショックで気が動転して、海の前でただひたすら泣いていた気がする。

莉央が後ろから近付いて来て、私の体をガンガン揺らして理由を聞くから

泣きじゃくりながら、ただ一言………


「……翔ちゃんって名前をただ呟いただけのような……」


……そう、そしたらまた一目散に去って行ったんだ。

私の言葉を聞いて、翔ちゃんはふっと笑った。


「ちょうど俺が家に着いたタイミングで、莉央が走ってきてさ。
庭のど真ん中で、振り向いた瞬間に
すげー勢いで顔面を殴られた」


「………!!」


「倒れた俺にまたがって、胸ぐら掴んで

“ 沙月が泣いてた。 俺はお前を許さない ” って。

……その目から

大粒の涙が、俺の顔に落ちてきた」



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