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喘ぐなら、彼の腕の中で
第13章 回想

「……さん、宮本さーん!」
「……!」
名前を呼ぶ声で、ハッと我に返ると
右隣りのデスクから、後輩の木村が顔を覗かせていた。
「どうしたんスか?」
「……何が」
「宮本さんには珍しくぼけーっとしてますね」
「してねぇよ」
「してましたよ。画面見てください」
木村に言われて自分のノートパソコンを見ると
左の薬指がキーボードの上で止まったままで、文章の途中からその文字だけ連打されていた。
「sssssssss……って。
あははは~どんだけドSなんすか~」
「黙れ。面白くない」
「だって宮本さんといえば。
上司でも部下でも関係なし、社内も外部も構わず、あり得ない条件提示で痛めつけて苦しめて…」
「おい」
「だけどそんなサド的部分は見せ掛けに過ぎなくて。
第一印象で惹きつけて、プレゼン力でガッツリ掴んで……スキルがハンパないんすよね」
「……」
「最後はみーんな宮本さんの虜になっちまうんだもんな~。
俺のことも何度も助けてくれるし。
マジで惚れますよ~」
「気色悪ぃな。
黙らないなら埋めるぞ」
「マジで宮本さんの為なら死ねるっス!」
……そのキラキラした犬みたいな目。
勘弁しろよ。
足を伸ばして木村の椅子を蹴飛ばすと、溜息をついた。
「死ぬって言うな」

