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喘ぐなら、彼の腕の中で
第13章 回想


契約書を作成中、無意識で打ち続けていたその文字をバックスペースで消していく。

……S……

俺の席からパソコン越しに真っ直ぐ前を見ると
5m程離れたパーテーションの先に、あいつの席がある。


「………」


椅子から立ちあがって、店舗開発チームの席へと足を進めた。


「綾瀬」
「……!!」


その名を呼ぶと、ビクッと体を震わせて
沙月が恐る恐る振り返った。

……なに、その怯えた目。


「DPで使った照明のカタログある?
今度のモデルで使うんだけど」

「……それは今
販売促進のチームに貸してます」

「あっそう。
じゃあちょっと聞きたいことが…」

「か、返してもらいに行ってきます!」


沙月はガタッと椅子から立ち上がると、そのまま逆側の販促チームへ一目散に去っていった。


「………」


……あの女。

資料室の一件があったから、この俺が気ぃ遣って優しく話しかけてやってるのに
シカトするくらいならチラチラ見てくるんじゃねーよ!


イライラしながら再び席へ戻り、煙草を掴んでフロアを出た。




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