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喘ぐなら、彼の腕の中で
第13章 回想

『翔太~! 水着玄関に置いてあるからね。
莉央、あんた早く着替えなさい。
今日は1日母さんとデートよ♡』
『はぁ? やだよ。
沙月達と海行くんだ』
『今日はだめ。明日にしなさい』
母は洗濯を終えると、笑顔で俺に振り返った。
『莉香さんにお花をお供えにいきましょう。
帰りにアイス買ってあげる♡』
* * *
夏の太陽がじりじりと照りつける中
両側に向日葵が咲き乱れる畦道を、母と並んで進んでいく。
生みの母親の墓地は、斜面に沿った高台の1番上にあって
階段を上って頂上に着くと、乾いた風が体を通り抜けた。
『まだ3年しか経ってないのに、初めてここに来た頃が懐かしいわ~』
花瓶に花を入れた後、墓石に水をかけながら母は笑った。
『あの時からぐんと身長伸びたし!
そこは3人とも父親譲りよね』
『……でも兄貴達は筋肉ついてきてる。
俺はヒョロくて嫌だ』
『あらいいじゃない。
母さんはあんたが1番イケメンになると思うわよ♡』
アイドル候補ね~♪とウキウキする母の背中をじっと見つめる。
……その笑顔が、心から笑ってくれているのか
胸の奥に燻る不安を、どうしても拭い去ることができないままだった。

