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喘ぐなら、彼の腕の中で
第13章 回想

小学校に入り世界が広がれば、学校の勉強以外にも、必然的に色んな情報を得る。
俺が愛人の子だということは周りの誰も知らないし、それによって何か被害を受けている訳でもなかったけど
浮気・不倫といったワードには敏感に反応するようになっていて
その度に、心臓がえぐられるような痛みに襲われていた。
………父はどーでもいいとしても
母は俺を見る度に、本当は悲しくて苦しい思いをしているんじゃないだろうか。
2人の兄貴達は、本当は俺を弟とは思っていないのではないだろうか。
自分が決して迎えられるべき存在じゃないことが
日に日に強さを増して、感じるようになっている。
『………』
母は隣りにしゃがむと、目を瞑って墓石に手を合わせていて
俺は黙ってその横顔を見つめた。
墓地を囲む木々の間から、太陽の光が差し込んで
幹に張り付く蝉が、せわしなく鳴き続ける。
『………母さん』
『なあに?』
『やっぱり、俺は
生まれてこない方がよかったんじゃないの』
ぽつりと呟いた俺の方に
母はゆっくりと振り向いた。
『どうしてそんな事言うのよ』
『……泣いてるから……』

