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喘ぐなら、彼の腕の中で
第13章 回想


過去1度も見たことがなかった、母の瞳から落ちる滴。

その涙を止めたくて、手を伸ばそうするけど

体が震えて届かない。


『違うのよ、ごめんね莉央』


母は涙を浮かべたままにっこり笑うと、俺の手を引いて抱きしめた。


『莉央がこれからもっともっと大きくなっていくのが、楽しみで、嬉しくて。
あなたのママも、きっと莉央の成長を見たかっただろうなって思ったら
自然と涙が出てきちゃったの』

『……母さん……』

『私が莉央に、どれだけの幸せを与えてあげられるか分からないけど
私の命を懸けて全力で莉央を守るって、約束するわ。
母さん、あんたが大好きよ♡』


母は体を離すと、いつもの笑顔になった。

そして、小指を伸ばした右手を俺の顔に近付ける。


『約束ね、莉央。指切りしましょう』

『……指切り……』

『そう、知ってる?』

『……生きてたときに、教えてもらった』

『ふふ、それは良かったわ♡』



母の小指に自分の小指を絡ませると

母は太陽のような笑顔で続けた。



『指じゃなくてもいいのよ。

握手でもいいし抱きしめるでもいい。

大切な人と約束する時は、こうして体を繋げるの。

そうしたら、心も繋がるからね』



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