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喘ぐなら、彼の腕の中で
第16章 先手必勝


土曜日の午前9時。
まるで私のチャレンジを祝福するかのように、空は快晴。

マンションのアプローチに辿りつくと、目線を上げて19階を見つめた。


“ 二度と入れねぇから、道覚えるなよ ”


「……フッ。浅はかね」


あの夜、号泣してたとはいえ、駅近でこんな高層階だったら忘れないっつーの。
だいたい、家を知られたくないんだったら最初っから呼びませんよね?

1人でニヤニヤしていると、エントランスから出てきたおじさんに不審な目を向けられた。


………笑ってる場合じゃなかった。

入れ替わるようにマンションのエントランスに入って
ロビーのガラス扉の手前、カメラ付きのインターホンの前で深呼吸。


「……ドM女が出ても。
冷静を装うのよ、沙月」


そう、彼にとって私は放っておけない女。
なぜか時々逢いたくなる女。


……それなら!!
当たって砕けろホトトギス!!


意味不明な気合いを入れて、部屋番号を押した。




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