この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
喘ぐなら、彼の腕の中で
第16章 先手必勝

土曜日の午前9時。
まるで私のチャレンジを祝福するかのように、空は快晴。
マンションのアプローチに辿りつくと、目線を上げて19階を見つめた。
“ 二度と入れねぇから、道覚えるなよ ”
「……フッ。浅はかね」
あの夜、号泣してたとはいえ、駅近でこんな高層階だったら忘れないっつーの。
だいたい、家を知られたくないんだったら最初っから呼びませんよね?
1人でニヤニヤしていると、エントランスから出てきたおじさんに不審な目を向けられた。
………笑ってる場合じゃなかった。
入れ替わるようにマンションのエントランスに入って
ロビーのガラス扉の手前、カメラ付きのインターホンの前で深呼吸。
「……ドM女が出ても。
冷静を装うのよ、沙月」
そう、彼にとって私は放っておけない女。
なぜか時々逢いたくなる女。
……それなら!!
当たって砕けろホトトギス!!
意味不明な気合いを入れて、部屋番号を押した。

