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喘ぐなら、彼の腕の中で
第16章 先手必勝


「いいじゃん、ケチ。
せっかく来たんだから入れてよ」

『呼んでない。
しかも休みの朝に、大迷惑』

「 “ 時々逢いたくなる女 ” がこんなにお願いしてるのに?」

『黙れ。俺は今1人で寝たいんだよ。
ヤリたいなら週明けに…』

「じゃあ、バラすわよ」


私は腕を組んで、そのスピーカー口に向かって続ける。


「甘いものが苦手でクールを気取ってる男が
実は熊のキャラクターが大好きだって」

『………!』

「莉央に憧れてる後輩の木村くん、昨日あんなに怒られて可哀想だったもん。
ちょっと笑いを提供してあげようかな~♡」


人の弱みに付け込むとは、まさにこのことだ。

お願いしてダメなら、あの日に得たネタを使うまでよ。

ほんの少し良心が痛むけど、亜美と違って嘘は言ってない。

それくらい私があんたを好きだってこと、分かってほしいんです。


『……言えばいいだろ』


少ししてから、莉央のしれっとした声が返ってきた。


『イイ男に噂は付き物だ。
お前が何を言おうと、どーせ誰も信じねぇよ』

「………」


~~~強情な男だな!
ここまでしてもまだ入れてくれないの?

1人で寝たいって言ってるから、女はいないのは分かってる。

共同玄関でこれ以上会話を続けるわけにもいかない。


………私を甘く見たのが運の尽きね。

思い知るがいいわ。



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