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喘ぐなら、彼の腕の中で
第16章 先手必勝


「沙月ちゃん、突っ立ってないで座りなさいよ」


莉央の隣りの椅子をひいて、おばさんは私を並んで座らせた。


「莉央は運転よね?
沙月ちゃんだけビール飲む?」

「い、いえ……私は……」


酒の力を借りるわけにはいかない。
かといって私、本当にシラフで乗り切れるのか!?

ぐるぐると頭の中でシミュレーションをしていると


「おい、いい加減ちゃんと説明しろ」


隣りから莉央の低い声が飛んだ。


「朝っぱらの突撃といい、一体何のつもりだ。
なんで兄貴まで呼びやがっ…」

「こらぁ莉央!!
27歳にもなってその言葉遣いの悪さはなんなの!
ガキじゃないんだから直しなさいよバカタレが!」


冷たいお茶を手に持って、そう注意するおばさんの口調も相当なものだ。

おばさんが私の正面に座ると、翔ちゃんが笑って口を開いた。


「俺も何で呼ばれたかは知らないんだよ。
重大な報告がある、と聞いただけ」




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