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喘ぐなら、彼の腕の中で
第17章 この手を、もう一度


* * *


夕方の4時半。

沈みかけの夕陽が、海面を茜色に染めるから
空と海が繋がったような、広大な景色が目の前に広がる。


キラキラと輝く波は、いつも心を穏やかにしてくれるけど

砂浜の上に足を抱えて座り、顔を突っ伏している今の私には
……少しの慰めにもならない。


「なに項垂れてんの」
「……!」


低い声とともに、後ろから足音が近付いてきた。
莉央がすぐ右隣りに座ったようだけど、私は顔を上げられない。


「……反省してるの」
「何を?」
「何もかも」


数時間前、ドン引きな暴走劇を繰り広げた後

おばさんのナイスフォローと暖かい応援によって、なんとかその場は和んだ……ように見えた。

翔ちゃんもおばさんもニコニコ顔で、ごちそうをいっぱい出してくれたけど

私は何を食べたかさえも思い出せない。


「それならそうとちゃんと伝言していけよ。
戻ってこねぇから、兄貴達が心配してる」

「……ごめんなさい」


自分のした行為が、恥ずかしすぎて痛すぎて
なんだかもう、このまま消えてしまいたくなって

酔いを醒ますふりをして、先に1人で海に来てしまった。


戻るに戻れず、しばらくこうして放心していたけど
迎えに来られてしまうくらい、時間が経っていたことには気付かなかった。




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